こんにちは。名古屋オーシャンズフットサルスクール大府校みなと校コーチの木村です。
先日エリートプログラム(選抜チーム)が施設連盟リーグの全国大会で3位に輝きました。
フットサルという競技を何も知らなかった彼らが、自分たちよりも大きな相手を翻弄し、勝ち上がっていくプロセスを間近で見ることが出来たことが、指導者としての財産になりました。
何より彼らの努力が実を結んだことがとても嬉しかったです。
いっしょに活動した1年半の間、本当に高い意識で取り組んでくれたので。
さて今回は【子供をロボットにしないために】というテーマでブログを書かせて頂こうと思います。
「どういうこと?」
と思われるかもしれませんが、最後までお付き合い頂けましたら嬉しいです。
ロボットとは?
私が指している『ロボット』とは、本人ではなく周りの大人がプレーの決断をしてしまっている選手のことを指します。
よく1つのプレーごとに
「ドリブル‼︎」「パス‼︎」「前に行け‼︎」
などとコーチングをしている方に会います(指導者や保護者)。
外から見ているとフットサルもサッカーも次の展開を予測することは比較的簡単なので、言いたくなる気持ちはよくわかります。
しかし、指示をされてその通りに動くのはロボットです。
そのプレーが成功しても失敗しても決断したのが、選手本人でなければ選手の成長には繋がらないと私は考えています。
なぜロボットだと良くないのか?
なぜ『ロボット』だと良くないのか?について深掘りしてみたいと思います。
理由は2つあります。
1つ目は選手の成長に繋がらないからです。
これがもっとクローズドなスポーツだったら話は変わってきますが、フットサルやサッカーは、ルール的な制約が少なくいつ何をしても(ルール上は)良いオープンなスポーツです。
野球であれば攻守の交代の時に少し間の時間があります。
打った後、走る方向もルール上決まっています。
野球は野球の面白さ、奥深さがありますが、フットボールとは求められるスキルに違いがあります。
フットサル、サッカーのようなオープンなスポーツで大切なのは判断力です。
いつ?どこに?どんな風に走るのか?一瞬で判断し実行しなければいけません。
周りから逐一指示を出されている選手は、いつ判断力を磨くのでしょうか?
そのような環境で育った選手が、指示が聞こえない環境や自発的に判断できる対戦相手と戦った時にどうなるでしょうか?
我々大人はしっかりと考えなければいけません。
ロボットはつまらない
選手をロボット化することがよくない理由の2つ目は、単純につまらないからです。
メンタルトレーニングでは心の三大栄養素というものがあります(私のブログに何度も登場しているので、ご存知の方も多いとは思いますが)。
①自主性
②有能感
③関係性
この3つが心を育む栄養素となります。
やる気を呼び起こすガソリンと言い換えても良いです。
大人の皆様も好きな本を読むことと、強制されるテスト勉強や受験勉強の大変さを比べればご理解頂けると思います。
1つ1つ指導者やお父さんお母さんに指示を出されて育った選手は、どこかでサッカーやフットサルに対する気持ちが冷めてしまいます。
初めは楽しかったフットサルが嫌いにさせてしまうようなことは、絶対に避けたいですよね。
野生育ちがベストか?
ロボットの対義語として『野生児』という言葉をここでは使わせてもらいます。
なんの指示も受けず、戦術も何もない中で育った選手を『野生育ち』『野生児』と呼ぶことにします。
例えばストリートサッカーや友達同士でのミニゲームを主体に育った選手は、最高の選手になれるでしょうか?
一昔前なら答えは『Yes』だったのかもしれません。
ストリート育ちの一流プレーヤーは過去にはたくさんいました。
しかしその頃のフットサルやサッカーとは、現代のフットボールでは求められる戦術的能力が何倍も違います。
かつてはFWの選手は点を取ることだけに専念していれば良かった時代がありました。
現代のFWは縦パスを受けたり、降りてきてパス回しに参加したり、味方のためにスペースを作ったりしなければいけません。
もちろん守備の局面でもチームの一員として果たすべき役割がたくせんあります。
その上で点を取らないと評価されない時代です。
ストリートや遊びのミニゲームだけでその領域まで辿り着けるでしょうか?
私の答えは『NO』です。
ロボットと野生の『良いとこ取り』を目指す
大府校やみなと校では逞しい個が連動するフットサルを目指しています。
言い方を変えると自分で判断し実行していける『野生児』の良いところと、チームから求められる戦術を高いレベルで遂行できる『ロボット』の良いところをハイブリッドした選手の育成を目指しています。
日本のサッカーやフットサルの課題として、ジュニア年代で『野生児』として育てられた選手が、ジュニアユースやユースで急に高度な戦術を求められ対応できずに沈んでいってしまうか、『ロボット化』してしまうという課題があると個人的には思っています。
ジュニアユースやユースの現場に直接関わっていないので、安易に批判するつもりはありませんが、私の周囲からの声を聞くとそういった状況に置かれている選手がまだまだたくさんいるように思えます。
ハイブリッドな選手をどう育てるか?
『ロボット』と『野生児』の良いとこ取り(=ハイブリッド)という難しい育成課題をクリアする上で、私が大切だと考えているのが、段階的な戦術の習得です。
戦術というと大げさに聞こえますが、要は相手に勝つための作戦のことです。
個人戦術に始まり、2人組の戦術、3人組の戦術、4人組の戦術、チーム戦術というようにフットサルでは戦術が整理されています。
戦術の整理という観点はサッカーと比べてフットサルの長所と言えるかもしれません。
悪い意味で『ロボット化』させてしまう原因として、いきなりチーム戦術を選手に要求してしまうことがあります。
かつての私もこの失敗を経験しましたが、そうすると例えば『ゴール前で味方がフリーなのに、横パスをしてしまう』というような現象が起こります。
点を取ることよりも『コーチに言われたことを実践すること』が目的になってしまうことがあります。
そうならないために子供の成長に合わせて、戦術を1つ1つ積み上げていくことが大切です。
どの年代にどの戦術を教える?
これはざっくりとした表ですが、下記のような育成計画で指導しています。
関わる物や人が段々と増えていくようなイメージです。
1.ボールと自分
2.ボールと自分と相手(敵、味方)
3.ボールと自分と相手ともう1人
というような感じです。
このように順を追って戦術を身につけていくと、監督から突然
「今日はFWで起用する。攻撃では味方が蹴れるタイミングで裏を狙ってDFラインを押し下げて欲しい。でも味方がプレスにハマりそうなら、早めに降りてきて一度パスを受けてからはたいて、もう一度ゴール前に入っていって欲しい。守備の時は…」
と言われても対応できるようになります。
また相手が3バックなのか?4バックなのか?ゾーンディフェンスなのか?マンツーマンなのか?などによって、自主的に攻め方を変えれるようになります。
将来的にそのような選手になってもらうために小学生年代に個人戦術と2人組の戦術をみっちりトレーニングしています。
なぜこのような考えに至ったのか?
先日過去に豊田校で指導していた子供からInstagramのダイレクトメッセージをもらいました。
内容は「今春から県外のサッカー強豪校に行くことになりました」というものでした。
強豪校に進むことももちろんですが、律儀に連絡をくれたことがとても嬉しかったです。
彼とは小学生の頃にノート交換をしていたのですが、その時のエピソードがハイブリッドな選手を育成することを目指すきっかけになっています。
彼(Rくんとします)は、THEフォワードというような感じの選手でした。
体格も大きかったですし、思い切りのいいシュートも持ち味でした。
しかし高学年に上がったくらいの頃からトレセンなどで悔しい思いをする機会が増え、オーシャンズスクールに通ってくれるようになったと記憶しています。
ある時ノートに
「急にセンターバックをすることになったけど、オーシャンズスクールでマークのつき方を習っていたので、良いプレーができました!」
と書いてありました。
そのことがきっかけになったのかわかりませんが、その後のRくんはさらに成長スピードを加速させていきました。
小学生の育成をしていると『選手の個性を伸ばすべきか?普遍的な物を身につけさせるべきか?』という悩みを多くの指導者は持ちます。
私も悩んでいましたし、今も100%の答えにはたどり着いていませんが、選手の個性は成長と共に変わっていくことと
チームによってその個性の生かされ方が変わるということです。
例えば小学生の頃は成長が人よりも早くて、体格を生かした突破が得意だった選手が、成長するにつれて周りとのフィジカル差がなくなり、周りを生かすタイプの選手に変わっていくことがあります。
『足が速い』という長所をサイドの攻撃的なポジションで生かそうとするチームもあれば、センターバックでカウンター対策として生かそうとするチームもあるでしょう。
そういった意味でも、私は小学生の間は普遍的でどのポジションでもどんなチームでも大切な個人戦術、2人組の戦術をメインテーマに指導しています。
例えば個人戦術はこんな感じ
話が難解になってしまいました。
百聞は一見にしかずということわざもあります。
この動画を観て頂ければ、私が指導している個人戦術とはどういうことか?
というのがご理解頂けると思います。
40歳前後のお父様にはどストライクのBGMもつけてあります(著作権に問題はございません。収益は全て版権元に行きます。)
よかったらご視聴ください。
「なんで木村コーチはアジリティや技術練習などのすぐに結果につながる練習をあんまりやらないのだろう??」
という疑問をお持ちの保護者の方もいらっしゃるかと思います。
そういった方への回答のつもりで今回のブログは書きました。
育成の正解は1つではありませんので、他の指導方法を否定するつもりは全くありませんが、私の考えを子供達も保護者の皆様もご理解して頂いた上でトレーニングした方が効率よく成長させてあげれると思っています。
わかりにくいところなど、いつでもご質問ください。
今後ともよろしくお願いいたします。