こんにちは。名古屋オーシャンズフットサルスクール大府校みなと校コーチの木村です。
日本各地で大雨による被害予測が出ています。
皆様安全第一で行動してください。
さて皆さんはオリンピックの日本代表の試合は観ましたでしょうか。
結果は4位。
メダルには届きませんでしたが、FIFAランキングを鑑みれば良い結果と言えるのではないでしょうか。
そして敗退後のインタビューで注目されている選手が田中碧選手の下記の発言です。
「デュエル」(球際、1対1で負けない)が比較的新しい言葉でことさらに求めあうが、すでにスペイン、メキシコは「デュエルだの戦うだのは彼らは通り過ぎている。チーム一体となってどうやって動いて、勝つかに変わってきている。個人個人でみれば別にやられるシーンというのはない。でも、2対2や3対3になるときに相手はパワーアップする。でも、自分たちは変わらない。コンビネーションという一言で終わるのか、文化なのかそれはわからないが、やっぱりサッカーを知らなすぎるというか。僕らが。彼らはサッカーを知っているけど、僕らは1対1をし続けている。そこが大きな差なのかな」
これは育成年代の指導者としてとても深く刺さる言葉です。
▽個人レベルでは世界と対等に戦えている
まずポジティブな面として個人の能力で日本のレベルアップを感じました。
田中碧選手も「個人個人でみれば別にやられるシーンというのはない」と発言されています。
これはすごいことです。
数年前まで『個』の能力の不足は日本サッカー界の大きな課題でした。
日本サッカー協会が主導し、個人の能力アップに日本全体で取り組んできた結果が1つ出ていると思います。
海外ですでに活躍している選手も多く、非常に頼もしく私も感じました。
▽なぜグループになると弱くなるのか?
個の能力で引けを取らないのに、なぜグループになると日本は勝てないのでしょうか?
上記の言葉に続けて田中碧選手は下記のように続けています。
「でも、2対2や3対3になるときに相手はパワーアップする。でも、自分たちは変わらない。コンビネーションという一言で終わるのか、文化なのかそれはわからないが、やっぱりサッカーを知らなすぎるというか。僕らが。彼らはサッカーを知っているけど、僕らは1対1をし続けている。そこが大きな差なのかな」
これは私も似たような感想を覚えました。
後出しで恐縮なのですが
オリンピック前の壮行試合の即興コンビネーションを多発する攻撃を見て
「上手いけどそれだけじゃきつくない?ジーコジャパンの二の舞いにならんかね?」と思った
即興も良いし好きだけどあくまで応用なはず
基本あっての応用基本は再現性の高いものであるべき
— 木村幸司_3児の父_育成年代のフットボール指導者 (@kimura_football) August 9, 2021
田中碧選手のコメントと並べるのは大変恐縮なのですが、私のツイートです。
ほとんどの方は『久保選手と堂安選手のコンビネーション』が、日本代表の最大の武器だったと考えていらっしゃると思います。
私の意見は少し違って、久保選手と堂安選手のコンビネーションは確かに素晴らしいし、ハマったらどんな相手でも打ち破れる強さがあると思います。
ですが、あまりにも単発的で選手任せであるところに危険性を感じました。
対策をされたり、どちらかのコンディションが下がった時に通用しなくなる可能性が高いと思っていました。
やはりチームの主軸となる攻撃は『再現性』が大切だと思うからです。
逆に言うと日本の選手が2対2や3対3になるとスペインやメキシコの選手に比べると劣ってしまうのはなぜかというと選手の即興性に任せているからだと私は考えています。
▽選手の即興性に任せているとなぜ上手くいかないのか?
即興性というのは選手のその場その場の閃きです。
フットボールをプレーしているとロジカルではなく、一瞬の閃きでプレーを選択する瞬間ってありますよね。
シュートコースが光って見えたり、体が勝手に反応するアレです。
この閃きは調子が良いと最高の結果をもたらしますが、調子が良くないとまず間違いなく失敗に終わります。
というよりも閃かずに無理やりなプレーで終わることがほとんどです。
いわゆる『再現性の低いプレー』です。
▽再現性の高いプレーと低いプレーの違いは?
再現性の高いプレーと低いプレーの違いは、決断するまでの過程にあると思います。
最終的に自分で決断することは変わりはありません。
しかしそこまでにいたる決断のプロセスとして
例えば『CBがサイドに釣り出された時に両CB間に間が空きやすい』というスカウティングがあったとして
『1トップがCBとSBの間にポジションを取ってCBを釣り出し』
『空いたスペースに中盤の選手が走りこむ』
という狙いがチームとして共有されていたとします。
最終的に走り込んだ選手にパスをするのか?また走り込んだことによって出来たDFラインとMFラインとの間のスペースを活用するのか?またが別の選択肢か?決断はよりシンプルになります。
そしてこの『CBとSBの間にスペースを創って中盤の選手が走りこむ』という状況を何度も作り出すことが可能になります。
これが再現性の高いプレーだと言えます。
つまり混沌の中でゴールまでの道筋を0から探すプレーを主軸に攻めるのとチームとしてゴールまでの道筋をあらかじめ共有しておくのと、どちらが有効か?という話です。
▽再現性の高いプレーが生み出す必殺の武器
チームとして共通の狙いを持って攻めると、どうやっても守れない必殺の武器を生み出すことができます。
それは3人目、4人目の効果的な関わりです。
久保選手と堂安選手の話に戻ると、彼らの閃きをベースにしたコンビネーションはとても息が合っていたと思います。
似たようなビジョンを描き、それを実現する技術を持ち合わせているので素晴らしい攻撃をたくさん見せてくれました。
ただそこに3人目、4人目が関わる攻撃はあったでしょうか?
正直少なかったと思います。
もちろん奪ってからテンポライズせずに早いテンポで攻め切ることを狙っていたので、物理的に連動しずらかったというのもあると思います。
ですがそこに関わるべき例えばFWの選手や中盤の選手が「次は何をするのかな?」と味方のプレーを見てしまっていた可能性もあると思います。
これがチームとしてあらかじめデザインされたプレーがベースになっていたら、しっかりと予測して相手よりも早くスタートを切り「どうやっても止められない」必殺の攻撃ができていたと思います。
▽2対2や3対3を掛け算にするために何が必要か?
私は閃きに頼らずに2対2や3対3を掛け算にするために必要なものは『グループ戦術』だと思っています。
『幅と奥行きと間を使って攻める』
『まずはゴール(裏)を目指す』
というような原則をしっかり身につけた上で、オーシャンズスクールでは色々なグループ戦術をトレーニングしています。
ワンツー、パラレラ、ディアゴナル、ブロック&コンティニュー、カーテン、縦ワンツー、セグンド、オーバーラップ、ディバイド、スイッチ、ピサーダ、クロスオーバー…
などの2人組の戦術がメインです。
それぞれの戦術の本質を理解し、実践を積み重ねる中で体得していけるように指導しています。
例えば『プレスの方向が縦からならワンツー、中からならパラレラを狙おう』というような形で、相手を見て一瞬で判断を変えれるように指導するのが私の特徴です。
毎回ゼロからアイディアを捻り出す閃きベースの攻撃ではなく、このようにある程度の型やパターンを持っておくことは非常に大切です。
これを持っておくことで、合わない状況になった時にすご他の選択肢を持つこともできるようになります。
▽他校の生徒と一瞬で分かり合える面白い現象
オーシャンズスクールでは普段関わりのない他校の生徒同士が、1つのチームとして戦うイベントがあります(合宿など)。
その時に面白いのは、私が指導している生徒同士がプレーの中で一瞬で分かり合えて素晴らしいコンビネーションを見せてくれることです。
もちろん彼らは初対面です。
なぜそんなことができるかというと、グループ戦術という共通のモノサシを持っているからだと思います。
そういった現象は、他校の生徒とも起こります(廣瀬コーチや竹村コーチの生徒とは特に多いです)。
フットサルはスペースが狭く、時間的空間的余裕はありません。
その中で勝つ確率を上げようと思うと、再現性を持って攻める(守る)ことが大切になってきます。
重複して恐縮なのですが、再現性を高める鍵になるのが『グループ戦術』なのです。
そしてそれが学べるがオーシャンズスクールです。
▽スペインとブラジルの違い
長くなって恐縮です。
最後に決勝戦の2チーム。ブラジルとスペインの違いについて感じたことを書きたいと思います。
まずどちらも戦術性に優れた素晴らしいチームでした。
違いはスペインはグループ戦術よりもチーム戦術が優れたチームだと感じました。
グループ戦術の範囲が2〜3人だとすると、チーム戦術は4〜11人です。
チーム全体としての戦い方がオーガナイズされていて、絶対の自信を持っているように感じました。
もちろんグループ戦術も素晴らしいのですが、そこに頼った戦い方はしていかったと思います。
ビルドアップや崩しの局面でも、常に4人以上が関わりあって攻めていこうとしているように感じました。
反対にブラジルは、優れたグループ戦術を武器に戦っているように感じました。
2、3人の選手だけで攻撃を完結させて、他の選手は守備に備えることに重きを置いているように見えました。
これは両国の育成方法が色濃く現れているのではないでしょうか?
そして少なくとも今回の日本代表に戦い方が似ていたのはブラジルだと思います。
ちなみに言うとスペインとブラジルはフットサルでも超強豪国です。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございます。
思ったよりも長文になってしまいました。
今回書きたかったことを一言でまとめると
『個人の閃き頼みでは限界がある。これからはよりグループ戦術が大切になってくるから、グループ戦術の申し子?のフットサルをこれからしっかり学んでいきましょう』
ということです。
伝わっていましたでしょうか 笑
それではこれからもオーシャンズスクールをよろしくお願いいたします。